これから会計ソフトを導入しようと考えているけど、勘定奉行クラウドってどうだろう?
勘定奉行には様々な料金体系があるけどどう違うの?
実際に便利?不便はない?
といった疑問を持たれている方に向けてこの記事を作成しました。
勘定奉行クラウドはやよい、moneyforward、freee等と比較すると、ある程度の規模感がある中堅企業にターゲットして製品を開発していると感じられました。
勘定奉行クラウドはエントリーモデルでも部門別管理が行えるほか、様々な切り口を組み合わせた会計資料が作成でき、それをエクセルで切り出すことができます。また、価格も弥生やMF、freeeと比較すると高価です。
そのため、
ある程度自社に必要な数字をわかっている企業、独自の経営資料を作成しているようなある程度成長してきた企業には勘定奉行クラウドが大変マッチすると思いました。
ということで、創業期の企業には少し敷居が高いため、弥生会計やMF、freeeが良いと思います。
ポイント
価格や性能面から、中堅企業をメインターゲットに捉えて開発されている会計ソフトです。
勘定奉行から会計ソフトがいっぱいあるけど違いは何?費用はいくら?
まず、勘定奉行には他社でもよくあるようにインターネットに接続しなくても動作するスタンドアロン版とインターネット上で動作するスタンドアロン版が存在します。
違いは銀行取引の自動仕訳や証憑保管に関する便利さの観点からクラウドの方が便利です。
詳しくは勘定奉行の販売店mimosaというサイトにわかりやすくまとめられていますので、良ければこちらをご参照ください。
今後のシステム開発の方向性を考えても、開発に力を入れているクラウド版がいいと思います。
スタンドアロン版の費用
料金はこちらです。
価格はスタンドアロンで250000円~なので、月額20000円以上となりますので、価格はかなり高めです。
価格面から見ても対象はある程度の規模感がある企業になりそうです。
証憑保管機能は、昨今話題になっている令和4年1月より施工されている電子帳簿保存法に対応するためのオプションシステムです。
この内容だけで1つの記事になりそうなので、ここでは詳細は控えますが、電子取引データを保存し、タイムスタンプを付与するために必要なシステムになります。
クラウド版の機能と費用
クラウド版はこちらです。
5段階で提供されており、iEが最も基本的なシステムでiSが最上級のシステムですね。
基本的な性能はAまでは変わらず、仕訳数で価格が変動するだけで扱える機能は同じです。
iB以降は会計データを経営に役立てるための機能が搭載されてきます。
iEで月額5,000円と一般的なクラウド会計と比較すると高めの価格設定です。
今回レビューするシステムはiEになります。
実際に便利?
アウトプット面において多彩な資料がエクセルで出せる点が大変便利です。勘定奉行の強みはアウトプットにあります。
インプット面は他社と比較しても普通です。
取り上げるなら、この価格帯なら搭載されているであろうエクセルを仕訳に起こす機能が搭載されていることですね。
機能紹介ーインプット編ー
基本入力(手入力)、インターネットバンキング連携、エクセル取込の3つをご紹介します。
基本入力(手入力)
他社会計ソフトでも似たような入力画面で特に特筆するポイントはないです。迷うことなく入力できます。
強いて言うなら、取引先コードを入力する欄があります。
インターネットバンキング連携
こちらの機能も他社と同等のオーソドックスな動作をします。
連携をとっている金融機関が表示され、各金融機関で何件の明細があるか表示されます。
任意で金融機関をクリックすると、受信明細が一覧で表示されます。
摘要欄に通帳に印字される内容が記載され、選択されている明細についての仕訳が画面下部に表示されます。
勘定奉行のインターネットバンキング連携は、初めて受信したときは完全に空白で表示されます。
2回目以降は同じ摘要が受信された際、手入力した仕訳と全く同じ仕訳が摘要欄に表示されます。
やよい、MF、freee等は初回受信時からAIにより、自動的に仕訳が表示されています。
私個人としては勘定奉行のように、初回は空白で受信した方がよいと考えています。
なぜなら、AIによる自動表示の方が自動化されててかっこよく見えるかもしれませんが、誤った仕訳を表示される場合もあります。
その点、初回は空白で手入力で入力する勘定奉行の方法であると、一見手間が多く見えますが、
こちらが意図したとおりの仕訳を自動化ルールとして会計ソフトに記憶させられるため、2回目以降の自動化の精度が格段に高まります。
ということで、インターネットバンキング連携はどの会計ソフトでも搭載されているといっても、細かい仕様は違うということですね。
ポイント
勘定奉行のインターネットバンキング連携は、初回は空白で手入力を求められるが、2回目以降の自動化の精度は高い。
エクセル読込機能
初めに、この機能は会計ソフトに搭載される機能の中でもハイグレードに位置する機能です。
販売管理システムや経費精算システム、その他売掛金管理表等のエクセルを読み込ませると仕訳が作成できる機能です。
すごいと思いませんか?
画像のように取り込ませたいエクセルを選んで、ドラッグアンドドロップすれば仕訳が作成されます。
販売管理システムで入力された取引を見ながら会計ソフトに手入力をする、経費精算の管理表を見ながら入力する、といった業務があると思います。
それが、このエクセル取込機能を使うことで、何十、何百とある明細が一発で取り込めます。
ポイント
仕訳数が多くてインターネットバンキング連携だけでは、物足りなくなってきたらこのレベルの機能が搭載された会計ソフトを検討する時期だと思います。
機能紹介ーアウトプット編ー
勘定奉行クラウドではあらゆる切り口から自社を分析することができます。
ただし、目的を持っていないと数字の羅列にしか見えないため、この多角的に確認できる資料を活用できるだけの企業側の能力が求められます。
でないと、高いだけの会計ソフトですので、グレードダウンで他社の会計ソフトを検討した方がよくなるでしょう。
どれだけ売れば黒字になるか把握できる
いくら売れば赤字から黒字になれるか、知りたくありませんか?
これをグラフで一発で確認できるのが損益分析店分析という機能になります。
自社が赤字から黒字になるためには最低限いくら売る必要があるか?を把握するための資料になります。
売り上げと費用がちょうど同じ金額になる売上金額を損益分岐点といいます。
この損益分岐点の情報をグラフ、数字で閲覧できる機能ですね。
いくら最低限売る必要があるかを把握することは経営においても非常に重要な指標になってきます。
最低限の売り上げ以外にも、自社の費用構成において、原価が多いのかそれとも原価以外の費用が多いのかがわかります。
そのため、費用削減における改善ポイントを検討しやすくなっています。
勘定奉行クラウドを導入されたら必ず使ってほしい機能です。
計画に基づいた経営を行える
しっかりした経営者であれば、最低でも1年間の経営計画を立てるのではないでしょうか?
その経営計画をどの程度実現しているか、会計数値を基に計測することが勘定奉行クラウドでは可能です。
計画と実績を月次、四半期、半期の期間で区切って対比します。
企業規模が大きくなると、取り入れられることが多いのが、経営計画に基づいた経営です。
損益分岐点と合わせてこちらの機能を使ってみてください。
勘定科目残高を部門、補助、取引先の切り口で分析できる
接待交際費が先月と比較して増加しているとします。社長はなぜ増加したか?を分析する際に勘定奉行であれば、
どこかの支店(部門)で使いすぎたのか、どういった内容(補助)で使いすぎたのか、どこの取引先で使いすぎたのか、を
分析することができます。例として、取引先別の内訳表を掲載します。
このように勘定科目の内訳を様々な切り口で分析できるのが勘定奉行クラウドの強みです。
様々な経営指標を閲覧できる
利益を生み出すのにどれだけ効率的に生み出せているか?売掛金の回収期間はどの程度の期間か?といった様々な経営指標を閲覧できることも勘定奉行の強みです。
下半分の画面で、数字が表示されているほか、閲覧したい指標をグラフで表示させることもできます。
また、テンプレートでも一通り経営指標は揃っていますが、オリジナルの経営指標も作成できます。
この数字を見ることで何がわかるか?を理解している必要はありますが、こういった経営指標を活用したい経営者にはうってつけの機能といえます。
証憑の保存について 電子帳簿保存法への完全対応には別ソフトが必要!
昨今話題になっている令和4年より適用される電子帳簿保存法の改正についてご存じでしょうか?
この法改正の要件を満たすためには勘定奉行クラウドとは別の「証憑収集 for 勘定奉行クラウド」というソフトが別途必要になります。
料金は公式に発表している情報は見つけられませんでしたが、勘定奉行を開発している会社と提携しているハイブリッヂ株式会社によると、
96,000円~/年だそうです。月額だと8,000円~という計算になります。
電子帳簿保存法の改正についてカンタンにご説明します。
令和4年より、電子取引データは電子のまま保存しなければならなくなりました。メールで受け取った領収書や請求書、Amazonで取得できる領収書等が該当します。
ほぼ全事業者が該当する法改正になりますね。
また、電子のまま保存するにあたり、適当に保存すればよいのではなく、保存要件を満たして保存する必要があります。
その要件を満たすために勘定奉行であれば「証憑収集 for 勘定奉行クラウド」が必要になる、ということですね。
詳しい要件が気になる方は、勘定奉行のヘルプセンターよりご確認ください。
法改正に伴い8,000円値上がりするようなものですが、システム開発メーカーとしても開発費用が発生しているため、やむを得ないのでしょう・・・
ポイント
電子帳簿保存法の改正により、令和4年から電子取引データを電子のまま保存する必要がある。
その対応のためには勘定奉行クラウドは別途96,000円~/年の別ソフトを購入する必要がある。
不便な点はない?
致命的に不便な点が1点あります。
画面展開が非常に遅いです。
他社でここまで画面展開が遅い会計ソフトはまだ見たことがありません。
あらゆる画面を開こうとすると、「処理中です」といった具合に読み込みが入ります。
他社であれば、クリックしたら1秒もあれば展開されるところを勘定奉行は5秒ほどかかります。
結構もっさりしていると感じました。
この点は大変残念なポイントです。機能が他社より優れていても使い勝手の悪さに直結する点だと思いました。
ポイント
画面展開がとにかく遅い。
前期比較ができない
自社の現状を把握、分析するために確認したいことは、
「前年と比較して今年はどうか?」です。
勘定奉行ではこの前年との比較ができません。経営分析としての機能を多数持ち合わせており、経営分析を強みとしている会計ソフトにとってかなり重大な欠点であると感じました。
前期比較をする場合は、エクセルに切り出して加工する、という作業が必要です。
結構手間ですね。結果、勘定奉行で前年比較を行う企業はあまりないのではないかと思います。
最後に
他社と比較し、勘定奉行はエントリーモデルからでも、大変詳細な分析が行える分高価なソフトになっています。
ある程度成長してきた企業にとって次のステップに会計の活用は必要になってきます。
高価な分価値も十分ありますので、現在利用している会計ソフトに物足りなさを感じたら、ぜひ一度検討していただきたい会計ソフトです。